「閃光のナイトレイド」プロデューサーインタビュー


テレビ東京とアニプレックスの共同プロジェクト"アニメノチカラ"。
その第2弾作品として、2010年春より「閃光のナイトレイド」が放送される。 テレビアニメがオリジナルとなるだけに、まだまだ謎が多い作品だが、はたしてどのようなストーリーが描かれていくのだろうか? そして、その見どころは?A-1 Picturesの大松裕プロデューサーとアニプレックスの足立和紀プロデューサーにお話を伺った。

幻の国「満州」をモチーフにしたアニメを作りたい

――「閃光のナイトレイド」は1931年の上海そして満州が舞台になるという事ですが、 この作品を制作することになった経緯を教えてください。

大松

松本監督をはじめ、足立さんや僕が携わっていた「ペルソナ~トリニティ・ソウル~」という作品のアフレコ現場が発端です。 「満州って国を知ってますか?」という、たわいもない雑談から広がっていきました。

足立
大松さんが満州に興味を持ってたんですよね。

大松
当時はまだ満州に関して詳しくなかったんですが、 本や映画で見聞きした印象……特に「幻の国」や「東洋の実験国家」等というフレーズが頭に残っていました。
それで、「満州」やその時代の歴史を切り取ってフィクションを作ると面白くなるんじゃないかなと。

足立
そして大松さんが「オリジナルの作品をやりたい」と企画を持ちかけてくれたんですが、 ちょうど同時期にアニプレックス社内で、オリジナル作品コンペの機会があったので、TVシリーズとして制作しようという話に発展しました。

大松
企画当初が2008年。「ジョーカーゲーム」という小説が出たり、 黒木メイサさんが川島芳子を演じた「男装の麗人」というドラマが放送されたりした時期で、 世の中的にも、この時代や国が注目され始めた頃だったと思います。
そんな素地がありつつ、この時代を題材にしたもう一つの理由として、 「他のアニメにはないビジュアルを獲得できるのでは」という思いがありました。
異世界や近未来を舞台にするよりも、歴史を遡ったほうが、 絵づくりの手段として有効なんじゃないかと前から思っていたんです。探すと色々なデザインや設定が出てきますし。

足立
正直、自分はこの時代のことを殆ど知らなかったので、「歴史を知らなくても楽しめる作品にしたい」という考えはありました。 当時の世界観をベースにしつつ、その上で多くの人たちが入り込めるような、熱いストーリーを展開できればと。
その点では、この1931年という時代設定が、むしろ好都合でした。 戦争=日常という世界なので、アニメ的にポピュラーな「男たちの戦い」というモチーフが、よりリアルに表現できるんじゃないかと思いました。

1931年に生きた人たちの"生き様"を描く

――「男たちの戦い」というキーワードが出てきましたが、どのようなストーリーが展開されていくのでしょうか? そしてその見どころは?

大松
スパイである主人公たちが、蒸発した関東軍の一個大隊を追い、その秘密を探っていきます。そして、世界規模の事件に巻き込まれていきます。 “サスペンス”“スパイアクション”…色々な見どころがあるかと思いますが、 やはり歴史をベースにしているので、「当時の人たちの生き様」というところを見てほしいと思っています。

足立
そうですね。「ナイトレイド」の時代=1931年の世界では、自由な現代と比べて、生きる上での選択肢が限られていたと思うんです。 たとえば、本当は軍人になりたかった人が、スパイになる事を強いられたり…。 世相や組織の制約に縛られ、自分の信念とは相反した道を歩まざるを得ない事が多々あったと思います。
今の時代に生きる人たちが、彼らの人生選択をどう考えるのか、ちょっと興味がありますね。

大松
この作品のストーリーやキャラクターを通して、今という時代が自分にとってどういう時代なのかを、少し顧みてもらえると嬉しいですね。 1931年を描きつつ、2010年をカウンターとして描くという事が、僕にとってのテーマです。

超能力を使ったスパイアクションにも注目

――シリアスな作品になりそうですね。

大松
シリアスで地味な雰囲気になるかもしれませんが(笑)、重苦しいだけの作品にはしたくないと思っています。
息を抜けるところも入れていきたいです。モノを創る上で、ユーモアは絶対に忘れちゃいけないと思っているんです。

足立
フィクションとしての「超能力」そして「スパイアクション」。エンターテインメント要素も充実させていきます。


――意識した作品はありますか?

大松
「陸軍中野学校」は一通り観ましたね。その時代を描いた作品ですし、 「ナイトレイド」の主人公となる三好葵の「三好」というのも、そこからとりました。 上海関係の映画も、世界観を参考にするために何作も観ました。 「ラストコーション」から「上海ルージュ」「上海グランド」「追憶の上海」それと織田裕二さんの「T.R.Y.」まで…。
また、欠かせないのが「戦争と人間」という3部作の映画。 昭和の初めくらいからノモンハン事件までを描いているような作品で、 ちょうど僕たちが描きたい時代を扱っていましたし、空気感も出ていたので、スタッフの間でも課題図書のような作品になっています。
さらに、スパイものとして参考にしたのは「ジョーカーゲーム」とその続編の「ダブルジョーカー」という小説です。 スパイという存在を理解するにあたってすごく役に立ちましたし、こんなムードを作りたいなと考えさせられました。

足立
機会があれば、是非「ナイトレイド」をご覧になる前に、チェックしてみてください。

とにかく第一話を見てほしい

――最後に、オフィシャルサイトへお越しくださった皆さんへ、メッセージをお願いいたします!

大松
まずは第一話だけでも何とか見ていただきたいと思っています。 絵コンテ作業に異常な時間を費やしただけあって、とても派手な仕上がりになりそうです。 そして第一話を面白いと思っていただけた方には、以降の深みを楽しんでいただきたいですね。

足立
「閃光のナイトレイド」は、オリジナル作品の中でもオリジナルというか…、類似するアニメ作品というのがあまりありません。 こういうジャンルに興味がなくとも、苦手意識を持たず、とにかく第一話を見てほしいと思っています。
歴史を知らなくても大丈夫です。どんな人が見ても楽しいエンターテインメント作品になると思いますので、春からのオンエアにご期待ください。

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